種馬ジャーナル

ストリートスポーツやアングラカルチャーを中心に、体験・レポートするブログ。話がまとめられない子なので、更新頻度が悲惨

「公開処刑」

しゃがれ声「そこのカス野郎!」
俺「!?」
 
 
「なんだこれ?」っていうのが正直な感想だった。
その一方で、「この曲は絶対みんな知らねえな」とニヤつく気持ちも同時にあった。
 
とは言え、本当にこの曲が何を言ってるのか、全く聞き取れなかった。
「死ぬか」「戦うか」はわかるけど最後何言ってんだ?と戸惑ってるうちに、しゃがれ声の人の順番は終わった。
 
 
別の声の人「俺もBOY-KENとは同意見 あれば話し合う相違点」
 
 
これが完全に俺のターニングポイントになった。
 
 
まず、こんな声の人聞いたことがない。そして何かリズムがすごく気持ちよくて何回も言いたくなる。
当時中学生の間でラップの代名詞的にもてはやされてた「オレンジレンジ」と比べても次元が違うと直感的に感じた。
 
 
 
公開処刑」を聴いて、俺は3つのことを学んだ。
 
 
まず、ラップには「BOY-KENとは同意見」のようなライムというテクニックがあって、それは割と「知力」が試される、馬鹿には出来ない芸当だということ。
 
次に、ラップには「ビッチ」とか「セルアウト」とか、普通に生きてたら絶対分かんないオタク用語みたいなのがたくさんあって、知れば知るほどにどんどん面白くなっていくということ。
 
そして、他人の悪口で1曲作っちゃうくらい、「言いたいことをハッキリと言う」ことが許され、美徳となるのがこのラップという音楽なのだということ。
 
 
 
 
ちょっと脱線するが、俺が小学3年生だった頃の話を一つさせて欲しい。
恥ずかしくてあんまり人にしたがらなかった話なんだけれども、これを言わなければこの先の話に進めなくなる。
 
 
 
当時俺は担任だった女の先生にいじめられていた。
 
 
理由は「人の話を全く聞かないから」。
図工の時間に糊の塗り方が違うだけでビンタされたり、体育の時間に遊んでる同級生がいたら「人の話聞かないとアイツみたいになるよー」と全員の前で言われたり。
 
 
その時は、「怒る」っていうよりも普通に悲しかった。
 
 
そして、散々な1日に不貞腐れてると、いつも奴は掃除の時間に俺を呼び出し、
 
「そんなつまんなさそうな顔してるといつもの君っぽくないよー。元気出して!」と声をかけてきた。
 
小3のクソガキながら、「コイツは親にバレないように隠蔽工作してんだな」と一瞬にして理解した記憶がある。大人って汚ねえなと思った。
 
 
チクろうと思ったらチクれるし、友達に不満を言おうと思ったらいくらでも言えるはず。
でも、恥ずかしすぎてそんなこと出来なかった。
 
 
結局、この1件は当時通ってた空手教室の送り迎え中に友達が俺の親に暴露し(本人は半ば冗談のつもりだったみたいだが)、両親が怒りの特攻を仕掛けたことによって解決を迎えることになる。
その様子を横目で見ながら、何も言い出すことの出来なかった自分の弱さにひたすら泣いた。
 
この時、「これからは思ったことは正しくハッキリ口に出そう」という、今でもずっと大切にしてる考え方を学んだ。
そして、そんな自分に、「言いたいことをハッキリ言う」この「公開処刑」という曲が重く、そして深く刺さった。
 
 
 
他にも何曲かキングギドラの曲が上がっていたので夢中でダウンロードした。
1曲1曲が楽しみで仕方なかった。
 
 
 
何曲か聴いていくうちに、あるもう一つの学びがあった。
 
 
 
「この音楽を、ヒップホップと呼ぶ」
 
 
 
長くなったが、これが俺とヒップホップの最初の出会いだった。
 
 
 
 
つづく